ましこ『アタマとココロの健康のために: 社会学的知の実践:レイシズム・ミソジニー感染防止ワクチンとハラスメント依存症治療』

http://www.sangensha.co.jp/allbooks/index/470.htm

差別、ヘイトスピーチ、ハラスメントなど社会的ウイルスから身をまもり、被害者/加害者にならないための社会学 
ヒト(宿主)に寄生することで暴力性を発揮させる社会的ウイルスに感染しないこと、発症しないようにおさえこむにはどうしたらいいのか。「レイシズム系」「男尊系」「階級差別」「独善的潔癖症」「アンチ思想的多様性」「コロニアリズム系」の各ウイルスの感染経路をたち、パンデミックをひきおこさないためになすべき方策を考えていく。

定価=本体 2,200円+税
2018年12月15日/四六判並製/224頁/ ISBN978-4-88303-470-3


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[目次]

はじめに  9

1章 「社会的ウイルス」感染防止のために  17
   1-0  「社会的ウイルス」とは一体なにか?  18
   1-1  レイシズム系ウイルス  18
      1-1-1  本質と感染経路:本質主義/優生思想/排外主義  18
      1-1-2  具体的対策:時空上の「旅行」による比較対照  20
   1-2  男尊系ウイルス  21
      1-2-1  本質と感染経路: 「オトコはつらいよ」という自己満足的なヒロイズム 21
      1-2-2  具体的対策  23
      1-2-3  補論:反動としてのミサンドリーと女性戦士  24
   1-3  階級差別ウイルス  25
      1-3-1 本質と感染経路:資産/地域格差を能力差と錯覚させるメカニズム 25
      1-3-2  具体的対策  27
   1-4  独善的潔癖症ウイルス  29
      1-4-1  本質と感染経路: 無自覚な自己中心性がもたらす独善性=錯覚の産物としての唯我独尊  29
      1-4-2  具体的対策:「外部」を汚濁と侮蔑・忌避する感覚からの「卒業」  30
   1-5  アンチ思想的多様性ウイルス  33
      1-5-1 本質と感染経路: 視野のせまさ=自己中心性がよびこむ思想的非寛容 33
      1-5-2  具体的対策:視野狭窄をさけるための「外部」の意識化  36
   1-6  コロニアリズム系ウイルス  37
      1-6-1  その本質:他空間に対する侵略・寄生  37
      1-6-2  その感染経路:植民者たちから現地エリートへ  41
      1-6-3  具体的対策:略奪・強奪行為に対する羞恥心の涵養  42

2章 「ハラスメント依存症」治療のために  51
   2-1  「ハラスメント依存症」の本質:ハラッサー(攻撃者)とハラッシー(被害者)  53
   2-2 「ハラスメント依存症」の治療とコピー回避:治療/透明化/抑止  55
   2-3 「ハラスメント依存症」とコピー回避からみた社会学周辺の知 64

3章  加害者性= 「中年化」という病理をさけるために 75
   3-0  「中年化」とは:理念型としての「オヤジ化/オバサン化」  76
   3-1  「オヤジ化」とは:「男尊系ウイルス」による病理の進行  77
      3-1-1  男性むけ「グラビア」自体が、女性にとって環境セクハラとなりえるのはなぜか  81
      3-1-2  「オヤジ化」の主要被害者がわかい女性だけではない理由  83
   3-2 「オバサン化」とは:「男尊系ウイルス」によるミソジニーの内面化 87
   3-3  「中年化」防止のために、なにをすべきか:健全な羞恥心維持のためのモニタリング  89

4章 アンチウイルス/攻撃依存症抑止技法としての社会学  95
   4-1  近現代の誕生と並行していた社会学  96
   4-2  リベラリズム(解放思想)と並行してきた社会学  99
   4-3  被害者にならないための護身術としての社会学  101
   4-4  加害者にならないための「姿見」としての社会学  107

     【 コラム】社会学って、結局なに?:「社会学的想像力」と「窓の学問」 112

5章 補論1:差別周辺のソボクな疑問にこたえて  123
   Q0  マジョリティ/マイノリティ、ってなに?  125
   Q1  差別と区別のちがいとは?  127
   Q2  差別のなかで、一番重大なものはなに?:量的差別として突出した女性差別  129
   Q3  差別かどうかは、差別されたと感じた自称被害者の主観できまるの?  131
   Q4  ヘイトスピーチと差別表現のちがいとは?  134
   Q5  レイシズムとは?  136
   Q6  欧米や韓国では黒人差別がねづよいといわれるけど、日本では? 141
   Q7  黒人差別・部落差別以外の日本型レイシズムとして深刻なものはなにか?:
      在日コリアンおよび沖縄差別  143
   Q8  ミソジニーレイシズム以外で深刻な差別問題といえば?  145
   Q9  それ以外で深刻な差別問題はないのか?  148
   Q10  差別しないために必要なことはなにか?:健全な悲観主義にもとづくモニタリングによる
       加害リスクの最小化  152

6章  補論2:無自覚なハラスメントのコピーとしての日本近代史 163
   6-1  日本近代史イメージ再考  164
   6-2  植民地主義の観点から冷戦期をふりかえる  165
   6-3  右派ナショナリストたちにとっての戦後日本  166
   6-4  戦前日本のふりかえり:ハラスメント史観からみた帝国日本  169

7章 補論3:大学・大学院で「まなびなおす」という意味
   大学など、高校以降で勉強することの意味と、おぼえておいた方がいいこと  179
   7-1  「児童生徒」の教育機関から、「学生」の学習空間へ  180
   7-2  大学での勉強とそれ以外の本質的ちがい  182
   7-3  「卒業論文」など大学独自の制度、そして時間割にならぶ講義科目の含意  187
   7-4  単位取得は自分自身への「長期投資」。大学/院修了者の蓄積は社会への「長期投資」  195
   7-5  授業へののぞみかた  200

おわりに  208

参考文献  211
索引  214

打浪文子『知的障害のある人たちと「ことば」―「わかりやすさ」と情報保障・合理的配慮』生活書院

知的障害のある人たちと「ことば」――「わかりやすさ」と情報保障・合理的配慮

知的障害のある人たちと「ことば」――「わかりやすさ」と情報保障・合理的配慮

https://seikatsushoin.com/books/知的障害のある人たちと「ことば」/


「ことばができる」ことに価値があるという文化や社会的風潮に対し問いを投げかけ、
社会全体で共有できる「わかりやすさ」の必要性を明らかにすることを通じて、
知的障害のある人たちの多様な表現と共にあることのできる社会のあり方を考える!


【目次】

はじめに
 ◆「ことば」の「わかりやすさ」・「わかりにくさ」とは
 ◆知的障害のある人たちのニーズ
 ◆教育学・社会福祉学と異なるアプローチから
 ◆この本のなりたち

第一部 「わかりやすさ」の必要性を考える

第1章 知的障害のある人たちと「ことば」――情報伝達・コミュニケーションに意味づけられたものをめぐって
 ◆知的障害とは何を指すのか
 ◆知的障害のある人たちと「ことば」――言語/非言語・コミュニケーション
 ◆知的障害のある人たちと「ことば」の関係性
 ◆知的障害と障害の「社会モデル」
 ◆知的障害と「言語権」「言語差別」
 ◆「ことば」へのニーズに応えるために

第2章 知的障害のある人たちと情報保障
 ◆障害のある人たちの情報保障・コミュニケーション支援に関する世界的な動き
 ◆国内の動き
 ◆情報バリアフリー
 ◆情報バリアフリーにひそむ問題点
 ◆情報保障とは
 ◆情報支援から情報保障へ
 ◆知的障害のある人の情報保障における課題

第3章 知的障害のある人たちと「わかりやすい」情報提供
 ◆「ことばのむずかしさ」という問題のとらえ方
 ◆「わかりやすい」情報提供に関する現状
 ◆「わかりやすい」情報提供に関する先行研究の整理
 ◆「わかりやすさ」の必要性

第二部 「わかりやすさ」を作る・広げる

第4章 「わかりやすさ」を作る――「みんながわかる新聞『ステージ』」を例に
 ◆みんながわかる新聞「ステージ」
 ◆「ステージ」の「わかりやすさ」
 ◆「ステージ」の意義と課題
 ◆「ステージ」の編集過程に着目して
 ◆知的障害のある人たちにとってむずかしい語彙
 ◆知的障害のある人たちにとっての「わかりやすさ」・「わかりにくさ」とは

第5章 「わかりやすさ」を広げる――〈やさしい日本語〉との接点から
 ◆「わかりやすい」日本語に関わる領域
 ◆「わかりやすさ」のルールの比較
 ◆知的障害のある人たちへの<やさしい日本語>の応用可能性
 ◆「情報のユニバーサルデザイン
 ◆情報のユニバーサルデザインの課題
 
第6章 「わかりやすさ」の普及を目指して
 ◆支援の場における「わかりやすさ」
 ◆「情報のユニバーサルデザイン」を進めるために
 ◆「わかりやすい情報センター」の必要性
 ◆知的障害のある人たちへの読み書き支援・読書支援
 ◆知的障害のある人たちの情報発信の多様化
 ◆知的障害のある人たちの「ことば」を受け取るときに

おわりに
 ◆合理的配慮としての「わかりやすい」情報提供・コミュニケーション支援
 ◆「わかりやすさ」は何なのか
 ◆この本の「わかりやすい版」について

わかりやすい版『「知的障害のある人たちと「ことば」』

お礼など
この本のもとになった研究について
参考文献
索引

【関連文献】

行動する社会言語学: ことば/権力/差別II

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ことばのバリアフリー――情報保障とコミュニケーションの障害学

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識字の社会言語学

識字の社会言語学

内田良ほか『調査報告 学校の部活動と働き方改革』(岩波ブックレット)

調査報告 学校の部活動と働き方改革――教師の意識と実態から考える (岩波ブックレット)

調査報告 学校の部活動と働き方改革――教師の意識と実態から考える (岩波ブックレット)

https://www.iwanami.co.jp/book/b378364.html



著者 内田 良 著 , 上地 香杜 著 , 加藤 一晃 著 , 野村 駿 著 , 太田 知彩 著
通し番号 989
ジャンル 書籍 > 岩波ブックレット > 社会
シリーズ 岩波ブックレット
刊行日 2018/11/06
ISBN 9784002709895
Cコード 0336
体裁 A5 ・ 並製 ・ 88頁
定価 本体620円+税
在庫 在庫あり

この本の内容
国際比較でも突出した長時間労働で知られる日本の教師に重くのしかかる部活動指導.9割以上が部活顧問を担当しているが制度上は義務ではなく,解放を求める声も上がる.では,どんな世代,専門,経験をもつ教員の負担になっているのか.一方で「やりがい」は何に由来するのか.勤務と意識の実態を,独自の全国調査データから描き出す.

内田良/斉藤ひでみ編『教師のブラック残業 「定額働かせ放題」を強いる給特法とは?!』学陽書房

教師のブラック残業?「定額働かせ放題」を強いる給特法とは?!

教師のブラック残業?「定額働かせ放題」を強いる給特法とは?!

http://www.gakuyo.co.jp/book/b366804.html

版元HPから


「このままでは過労死するかも」
「プライベートがまったくない!」と悩む教師の方、必見! 

あなたが長時間労働になっているのは、あなたのせいではありません。

教員は、「給特法」という法律のもとで、どれだけ働いても勤務時間を把握されず、
「自主的に」残業しているとされて、いくらでも仕事が増やされてきたから、
民間企業や一般公務員ならありえないほどの職務を担わされて、帰れなくなっているのです。

「給特法」のせいで、教師は民間企業や一般公務員と違って、
月8時間程度の残業代だけで、いくらでも残業させてよい状態にされています。

教師の多くが過労死ラインの月80時間以上の残業をさせられている状態になったのは、
この「給特法」という法律のためです。

いま、この状態の中で、どうしたら自分の身を守ることができるのか?
教師の長時間労働問題をわかりやすく伝え、具体的な身の守り方を伝える1冊です!


目次
目次案
第1章 教師の仕事は残業が当たり前?
第2章 なぜ長時間残業が常態化しているのか?
第3章 残業で教師の仕事はどうなっているのか?
第4章 自分の身を守るためにすべきこと
第5章 ブラック残業を止めるために



【関連文献】

教師がブラック残業から賢く身を守る方法

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脱ブラック部活 (新書y)

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教育社会学 (MINERVAはじめて学ぶ教職)

教育社会学 (MINERVAはじめて学ぶ教職)

教育社会学 (MINERVAはじめて学ぶ教職)



http://www.minervashobo.co.jp/book/b375713.html


吉田 武男 監修
飯田 浩之 編著
岡本 智周 編著

人間の「社会化」の場として学校教育を見つめ直すことの重要性は、今日の学校教育を考える上で高まっている。本書は教育社会学におけるものの見方や考え方を解説し、学校を取り巻く社会の諸相を具体的に提示する。それによって、教職を目指す学生に、学校教育を中心とする教育の実際を社会学的に捉えることの興味深さと重要性を伝えることを目的とした最新のテキスト。


[ここがポイント]
◎ 教職課程コアカリキュラムの「教育に関する社会的、制度的又は経営的事項」に準拠
◎ 教職を目指す学生および現職の教師に必携のテキスト。


監修者のことば
はじめに

第1章 教育社会学のアプローチ
 1 アプローチの特徴と対象
 2 教育社会学の歴史——日本における「方法の学問」としての確立と成熟
 3 教育社会学パースペクティブ

第2章 教師・児童生徒・カリキュラム
 1 教師という役割,児童生徒という役割
 2 社会学的視点から見たカリキュラム
 3 変わるカリキュラム,変わる教師—児童生徒関係

第3章 教育機会と進路選択
 1 教育機会と法・制度
 2 高等教育機会とその意義
 3 教育機会・進路選択に影響をおよぼす要因
 4 高等教育のユニバーサル化に向けて

第4章 高等教育
 1 現代社会における高等教育
 2 高等教育の量的拡大と質的変容
 3 高等教育機会の保障
 4 高等教育の費用負担
 5 研究・教育の自由と大学の自治

第5章 学業世界と職業世界
 1 学業世界と職業世界をつなぐ原理
 2 日本における学業世界から職業世界への移行
 3 「能力」による対処とその限界
 4 移行に困難を抱える「若者」を把握する
 5 子ども・若者の移行を支える教育的営為を構想する

第6章 市民社会と学校教育の課題
 1 学校教育と「国民形成」
 2 国民社会から市民社会への移行期における学校教育
 3 日本の学校教育の課題とそれに対応するための資源

第7章 マイノリティから見た学校空間
 1 マイノリティの子どもたち
 2 学校教育を通じたマイノリティの排除と無力化
 3 学校教育に対する新たな社会的要請
 4 包摂の時代の学校教育と教師

第8章 ジェンダーと学校教育
 1 ジェンダーとは何か
 2 近代学校教育とジェンダーの生成——戦前期の学校教育
 3 戦後教育における脱ジェンダー化・再ジェンダー化のせめぎ合い
 4 教育実践とジェンダー・トラック
 5 多様な性の理解の可能性に向けて——2015年文部科学省通知

第9章 子どもの問題の現在
 1 「子どもの問題」の増減と社会問題化
 2 「子どもの問題」の背景・要因と防止・解決策
 3 「子どもの問題」への向き合い方を問い直す

第10章 学校という空間と社会
 1 教育社会学はどのように学校を研究してきたのか
 2 教育社会学から考える「スクールカースト
 3 教育社会学から考える「アクティブラーニング」

第11章 家族のあり方と学校制度のかかわり
 1 子どもの社会化の場——個人・家族と国家・社会
 2 家族・学校の成立と「家庭教育」の誕生——近世〜明治期
 3 「近代家族」の成立と汎化——大正期〜高度経済成長期
 4 多様化する家族と学校とのかかわり——1980年代以降
 5 子どもの社会化における「家族」の役割——国家の家族への介入

第12章 子どものメディア利用とその行方
 1 子どもとメディアの関係
 2 情報等を伝えるメディア
 3 人をつなぐメディア
 4 子どもとメディアの行方

第13章 教育社会学の課題と展望
 1 共生を志向する社会としての現代日本
 2 社会の変化に対応する学校教育
 3 教育社会学が捉えるべきもの

付  録 (教育基本法/学校教育法/学校教育法施行規則/中学校学習指導要領前文)
索  引


【関連文献】

共生の社会学

共生の社会学

  • 作者: 岡本智周,丹治恭子,平野直子,熊本博之,笹野悦子,麦倉泰子,和田修一,坂口真康,大黒屋貴稔
  • 出版社/メーカー: 太郎次郎社エディタス
  • 発売日: 2016/04/08
  • メディア: 単行本
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川上郁雄・三宅和子・岩崎典子編『移動とことば』

移動とことば

移動とことば

http://www.9640.jp/book_view/?774

amazon.co.jp 楽天ブックス
国籍や出自によらない多様な越境が常態となった今日、「移動」という視点抜きに、流動的な「ことば」を語ることはできない。本書では、そのような「移動とことば」の常態を踏まえ、研究者自身が移動を続けながら研究テーマに向き合う地動説的研究を目指した。当事者のインタビューやライフストーリーをもとに、複数言語環境の中で移動する人々の、他者との関係性、言語経験・記憶を解き明かす。

序章 なぜ「移動とことば」なのか(川上郁雄)

第1部 移動の中のことばとアイデンティティ

第1章
「ハーフ」の学生の日本留学―言語ポートレートが示すアイデンティティ変容とライフストーリー
(岩粼典子)

第2章
移動する青年のことばとアイデンティティ―オーストラリアで継承日本語を学ぶ学生の事例から
(倉田尚美)

第3章
日仏国際家族環境を背景に持つ日本語専攻修了生の「移動」の経験と意味づけ
(山内薫)

第4章
子どもたちが「移動しながら生きる自分と向き合う」授業実践―シンガポール日本人学校の事例から
(本間祥子)

第5章
外国につながる子どものキャリアデザイン―「国」「ことば」の認識との関わりに着目して
(人見美佳・上原龍彦)

第2部 移動の中のことばとライフ

第6章
国際結婚家庭2世代の「移動」と「選択」―母から娘の50余年間の軌跡をたどる
(三宅和子)

第7章
ある中国残留孤児の系譜―一世から四世までのインタビュー
(上田潤子)

第8章
移住者の語りに見られる「経験の移動」が示唆するもの―Agencyという観点から
(八木真奈美)

第9章
国境を超えたあるろう者のライフストーリー―ろう者にとっての「移動」と「ことば」
大塚愛子・岩粼典子)

第10章
移動するパキスタンムスリム女性の青年期の言語生活
(山下里香)

第11章
「移動する子ども」からモバイル・ライブズを考える
(川上郁雄)

展望討論
「移動とことば」研究とは何か
(三宅和子・岩粼典子・川上郁雄)

【関連図書】

「移動する子どもたち」のことばの教育を創造する―ESL教育とJSL教育の共振 (シリーズ多文化・多言語主義の現在)

「移動する子どもたち」のことばの教育を創造する―ESL教育とJSL教育の共振 (シリーズ多文化・多言語主義の現在)

「移動する子どもたち」のことばの教育学

「移動する子どもたち」のことばの教育学

「移動する子ども」という記憶と力 (リテラシーズ叢書)

「移動する子ども」という記憶と力 (リテラシーズ叢書)

ク・ソウン作 李恵子 訳『黒い砂』新幹社

黒い砂

黒い砂

http://bunka-isan.awa.jp/News/item.htm?iid=1208

NPO 安房文化遺産フォーラム
タイトル: 書籍「黒い砂」寄贈いただきました。
掲載日時: 2018年05月25日(金曜日) 12時55分
アドレス: http://bunka-isan.awa.jp/News/item.php?iid=1208
NPO会員の金床憲(キムサンホン)様より、
書籍「黒い砂」を寄贈いただきました。

済州島出身の海女が四世にわたり、日本で暮らした小説です。

房総半島和田浦も舞台の一つとして度々登場します。

ぜひご一読ください。


「黒い砂」
ク・ソウン著・李恵子訳
定価=2,000円+税

発行=新幹社(郄二三)


【書評】

小説『黒い砂』と和田浦
「……母さんが結婚する前、お前のお祖母さんについて房総半島にある和田浦というところで出稼ぎ仕事をしてたことがあるんだ。今はそこに故郷の人が多くいるから、少しのあいだ、そっちへ行こうと思うんだ。何と言ってもそこは東京にも近いし。ここ(三宅島)にいるよりも噂が伝わるのも早いじゃないか、そう思ってね」

三宅島に夫の姉家族とともに来たクオゥルは家族と別れて和田浦へ行く決心をした。夫が徴用で召集され、長崎に居るらしいという消息を聞いてのことだった。ここで母子三人の和田浦での生活が始まった。結局、夫は長崎で被爆死し、遺体すら発見されなかった。夫が帰ってくると信じているクオゥルは、和田浦で帰還を待たねばならない。その間、へグン(娘)も大人になり、キヨン(息子)も大学生になった。キヨンは民族学校で学び、共和国(北朝鮮)への帰国の途につく。そしてヘグンは、キヨンの先生と恋に落ち、子を宿す。だが、その子の父も朝鮮戦争に参戦し戦死する。ヘグンはコニルを産み、松川フクオという聴覚障害者と結婚し、コニルは松川ケンイチという戸籍を得て成長する。南房総のおだやかな風景と温情、だが厳しい海での海女という仕事。のちにこの家族は南房総を離れて三宅島に移住する。

済州島出身の海女たちの日本における生活ネットワークの存在もあるし、南房総における日本人との生活交流もある。戦中、戦後の厳しい時代、簡単なことではなかったにちがいない。朝鮮人も苦しかったし、日本人も同様であった。共に生きてきたのあった。

済州島出身の海女たちの四代にわたる日本における家族史は、大きな歴史的現実に揺り動かされ、波乱万丈の生活史となる。そのような中にあっても民衆の一人ひとりは歴史を受けとめ生きぬいてきた。そのたくましさに目を見張りながらも、その生き方の中に希望を見失わない心を見出すことであろう。済州島出身海女の生活世界を知るためのとても佳い書です。



http://bunka-isan.awa.jp/About/item.htm?iid=244

安房に来た済州海女

済州島からの朝鮮人海女と軍需物資「カジメ・アラメ」●
カジメとアラメは外海性岩礁に育成する大型の多年草海藻で褐藻類である。明治初期までは主に肥料として使われていたが、明治20年代に入って海藻灰ヨード工業がおこると、その工業原料として大量に用いられた。生産量は年々増加し1904、5年の日露戦争中に急増したことで、1908年(明治41)森為吉らは房総の粗製ヨード製造業者を合同して「総房水産(株)」を設立した。1914年(大正3)第1次世界大戦中にカジメ生産量が最高になったのも、敵国ドイツよりの医薬品輸入がストップしたことで、ヨードや塩化カリなどの国内生産が求められからであった。

1926年(大正15)森は日本沃度(株)を設立しヨードの製造やヨードを主とする医薬品の製造をおこない、自社製の塩化カリを原料として硝石をつくり、陸軍造兵廠へ納入した。27年に樺太沃度合資会社、翌年【朝鮮沃度(株)】が“済州島”を中心に開設されるが、世界恐慌の波及でヨード業界は不況になる。そして1931年満州事変が始まり、軍需が増大しカジメ生産が上昇していく。

しかし1934年(昭和9)ころ、天然ガス鹹水ヨード工業がおこったので、カジメ生産量は減少していくことになる。ところで磯根漁業はカジメ・アラメの採集だけでなくアワビ採捕が中心になる。アワビはカジメ・アラメを餌とする食物連鎖上の高次動物の一種である。しかしアワビは軍需物資の条件に乏しかった。

1941年(昭和16)8月2日付け「カジメ採集ニ関スル件」のなかで「決死的御協力ニ依リ其責任数量確保ニ萬全ヲ期シ国家ノ使命・・緊迫セル時局下ニ於ケル国策遂行ニ協力」とカジメ採集の供出責任数量を各漁協に割り当てている。そして、千葉県経済部長から漁業協同組合長にあてた文書には「カジメの供出が高度国防国家建設に寄与する処大なるを貴組合員に周知せしめ当分の間カジメの採取、集荷に専念せしめられ度此段重ねて及通牒候也」と述べられている。

さらに8月16日付けで乾燥したカジメ・アラメは軍部の指示で「昭和電工株式会社ニ荷渡ス事」と通知された。この昭和電工(株)は前述の日本沃度(株)が日本電気工業(株)と改称後、1939年昭和肥料(株)と合併して設立された、陸海軍指定工場で、41年当時には千葉県内には興津工場(ヨード・ヨードカリ・塩化カリの製造)・館山工場(ヨード・塩化カリ・カリ肥料・食塩を製造)があった。

ところで両工場では、乾燥カジメ・アラメを焼いて海藻灰(ヨード灰=ケルプ)からヨードを製造していた。供出品の水分や砂分を規定し、乾燥その他についても工場側に有利な取扱いであった。アワビなどを差し置いてカジメの採集、集荷に専念することが国策として求められた。1943年6月4日の「朝日新聞」千葉版には、「カリを多量に含む海藻が軍需資源として極めて重要であるに顧み商工省では陸海軍、農林、企画院の各省および全漁連、カリ塩対策協議会と協力し全国の漁民を総動員して海藻採取の大運動を展開している」の記事が見られる。

このように海藻灰ヨード工業は戦争と深いかかわりがある。化学薬品のヨードは医薬品をつくる軍需物資であるとともに、このヨード原料の海藻カジメ・アラメが「火薬」原料という極めて高度の軍事戦略物資であったことを忘れてはならない。と同時に“朝鮮の済州島から来た海女たち”が、このカジメ・アラメ採集に深くかわっていることを指摘したい。


●朝鮮の済州島の海女●
朝鮮では海女、つまり裸潜漁業者を「チャムス」「チャムニョ」「ヘニョ」と呼んでいる。古来より朝鮮の済州島ではチャムスによる漁業が盛んであった。日本の海女技術は、済州島から伝わって来たともいわれている。明治期より日本の潜水漁業者が豊かな磯根漁場であった済州島に進出し、トラブルも起こしている。記録によると、1915年に日本人ヨード製造業者が済州島のカジメを買い占めたとあるが、前述したように28年には【朝鮮沃度(株)】が済州島に設立されている。

その間、20年には済州島海女組合が創設されたが、総督府御用組合であったので、日本商人のための組織であった。そのなかで30年には、済州島よりの出稼ぎの海女3860人が、海女組合に抗議する漁労作業拒否のストライキ闘争をしたといわれる。さらに32年1月には、いわゆる「済州島海女闘争」があり、大小集会やデモが238回、延べ16036人チャムスが参加し、労働条件を若干改善したという。

当時済州島からの出稼ぎチャムスは5078人(海女組合員総数8862人の約57%)にのぼっており、朝鮮本土へは3478人、そして日本へ1600人(当時の日本の海女は12913人)いったという。日本での出稼ぎ地域をみると東京(三宅島・大島)・千葉・神奈川・静岡・三重・徳島・高知・鹿児島・長崎であった。1939年「国民徴用令」は官斡旋とか一般徴用という名のもとで、多くの朝鮮人への強制連行おこなわれるが、海女関係も例外でなかった。ところで朝鮮総督府済州島開発と称して火薬原料としての「カジメ」切りの義務化や供出を命じている。またイワシの巾着網漁業が奨励され、イワシからの油もグリセリンという軍需物資に化けた。

日本に来たチャムスの金貞仁さんは徴用でカジメ切りをされたという。「館山に館山航空隊っていうのがあったの。そこで上の人から命令があって、組合関係の人が来て、カジメを切りに来れば炭坑に徴用に行かなくもいい」といわれた。1944年ころカジメの需要が急増するなかで、働き盛りの海士たちを戦場に取られた房総の漁村では、労働力として出稼ぎに来ていたチャムスたちが動員された。一つの浜を取り尽くすと隣の浜に移動するというように、「漁業組合関係者の監視のもとにとれる限りとった」という。特に金谷・保田・勝山一帯はもともと海女がいなかったのでチャムスが動員された。

1938年頃から勝浦にも毎年10人前後のチャムスたちが出稼ぎに来ていた。その時引率者のひとりの文万国さんはチャムスについて「日本に来たのは生活のため。来ればそれだけ食いぶちが減る。あの時は男であろうが女であろうが若いもんはみんな軍需工場へ引っ張り出すとか、朝鮮の慰安婦というやつを戦場送るでしょ。若い娘たちはそういうところから逃れようとして来ていた」という。

1943年に日本に出稼ぎに来た金栄児さんは、和田浦でアワビ・テングサなどを採っていたが、44年からはカジメ切りを強制された。食糧の配給が少ないので、ひもじさを補うためアワビやサザエを採ろうにも、漁業会からはカジメ切りの期間はアワビ採りは一切禁止され、採った場合厳しく処置された。軍需物資としてのカジメの増産に毎日おわれていたのである。



済州海女の墓地



・『海を渡った朝鮮人海女―房総のチャムスを訪ねて

海を渡った朝鮮人海女―房総のチャムスを訪ねて

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