『社会学のまなざし』コメンタール(回路3)
受講生からでた質問への回答にかえて、各記述について、補足説明。
※ 表記などについての疑問については、「『社会学のまなざし』誤植一覧」
人類学者や社会学者たちがうたがっている、「その実体性」(p.92 7行)
↑ 「人種」や「民族」の「実体性」。次項参照。
「ひとびとがかたる「民族」など、ほとんど無内容」(p.92最終行)
↑ 直前の「自分たちの文化・歴史を共有している」「という信念がもたらす求心力の産物」、あるいは、「ユダヤ人」のように、キリスト教徒など異文化にある集団からみたときの「集合体」≒幻想が、「民族」の本質(本性)。
後者における境界線があいまいすぎてナンセンス(ネット右翼らによる「在日認定」etc.)であることはもちろん、内実の多様性をくくる概念の妥当性は、つねに微妙な本質主義の産物、いいかえれば、先入観にもとづく共有化された錯覚(共同幻想)であることは、明白。
前者も、日本国籍者ほか「日本人」とみなされる人物全員が共有する「文化・歴史」などないといって過言でない(アイヌ系/琉球系/朝鮮系etc.)。
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「文化人類学者や社会学者たちが「実体」として着目するのは、ひとびとが共有している「人種意識」や「民族意識」という実態の現実」(p.93 1-3行)
↑ 人類学や社会学の学界では、「人種」や「民族」などを「実体」視することから解放されている。しかし、「人種」や「民族」などを「実体」視する集団が、たとえばナチズムを奉じてグロテスクな愚行をしでかしたとか、原爆投下や強制収容など蛮行が正当化してきた歴史的事実に着目する。独立運動などナショナリズムや北米の公民権運動など解放闘争も、「民族」や「人種」を実体視する集団心理ぬきには説明不能だと。