社会学A(中京大学2016年度)質問回答補遺2
◇④「(第15回プリントp.7)ATMやAmazonでのドローン配達や自動車の自動運転など、多くのシステムがここ何年かで無人化になってきているが、AIの誕生によりすべてが機械化されて、AIが仕事を奪い、なくなるなんて噂も聞くが、もし仮にこのままマクドナルド化や機械化が進んでいくとして、本当の「そして だれもいなくなった」という世界は、いつぐらいにおとずれるだろうか?」:■工学系のしろうとなので、責任ある予想などは、到底できかねます。授業でくりかえしのべたように、時事的な解析や、未来予想を、権威主義的にほしがるのは、社会学感覚からもっとも対局にある、よろしくない知的怠慢です。特定の知的カリスマに心酔してしまい、マインドコントロールをうけてしまっていることに全然きづかないなど、ナチズムへと暴走していく時期のドイツ国民などと共通する、「衆愚」といってさしつかえないと。■ありとあらゆるマインドコントロールから解放されることは、事実上困難ですが、社会学は、そういったリスク回避の手法として、「知の護身術」たりえることは、テキスト、および、その前身たる『あたらしい自画像 「知の護身術」としての社会学』で力説したとおりです。
- 作者: ましこひでのり
- 出版社/メーカー: 三元社
- 発売日: 2012/03/01
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 3回
- この商品を含むブログ (6件) を見る
- 作者: ましこひでのり
- 出版社/メーカー: 三元社
- 発売日: 2005/01/01
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (12件) を見る
■まず、経済学者たちが くりかえしのべてきたように、ロボット化は、あくまで、人件費とのかねあいで登場・定着がきまります。東南アジアなど、のんびりした社会でロボット化がすすまないのは、「納期にまにあわせるために超高速で生産する」「人件費などコストは、ギリギリまできりつめる」といった、競争圧力がないからです。ものすごくやすい人件費で、ゆっくり作業をつづけて、それで、とりあえず 世間が まわっているのです。そういった空間には、超高速で生産をつづけるロボットは不要です。購入コスト/ランニングコストが その社会にとって たかすぎるし、そもそも、そんなに あわてて まにあわせるべき 納期/信頼性などが、うまれていないのです。■したがって、こういった空間では、あとずっとしばらく、「そして だれもいなくなった」は、到来しないとおもいます。
■ただし、日本列島に急増中の「限界集落」が、そうであるように、現在の第三世界から、どんどん人材が流出して、「多産少死状況なのに人口がへっていく」という奇妙な現象がおきる可能性はあります。■現代日本で、高学歴化がすすむ女性たちが一部地域回帰にむかう一方、基本的には大都市圏に進学し就職し、そこで単身者としてすごすか、家庭をもっても1-2名の育児をこなすだけ……。という、過疎化を大量発生させる「都市化」はまだとまっていません。首都圏/東海圏などは、基本的に漸増傾向。女性たちの晩婚化/非婚化/少子化という、少子高齢化傾向は基本でも、周辺地域を中心に、わかい世代がながれこみつづけるからです。■そして、ここで、いわゆる「白人女性」の晩婚化/非婚化/少子化がすすんでも、人口がふえつづける北米の空間が、日本の大都市圏の人口動態をより強調したようなかたちで展開していることに着目すべきです。アメリカは超差別的な空間なので、北欧やフランスのような育児サポート政策はうたずに放置しているとおもわれます。だから、富裕層以外は、ヨーロッパ系の家庭は少子化をすすめているはず。しかし、ながれこむヒスパニック女性たちがカトリックとして避妊を忌避するなど、こだくさんになっていく。北米が少子高齢化せず、人口がふえつづけている現実は、将来の日本列島をかんがえるうえでも、示唆にとむとおもいます。■一方、北米のような「ひとりがち」状況で、世界各地から人口を吸収しつづる空間があるということは、人材供給地ではあっても、自分たちのホームランドが はかばかしくいかないという、日本列島の過疎地と同様な構図をつくりかねないということです。いま、アジアの人口爆発が懸念され、つづいてアフリカの急増が心配されていますが、あふれそうな人口のうけざらが、じもとにできないかぎり、北米など「地上の天国」が、ますます ひかりかがやいてみえ、どんどん人口が流出していくでしょう。
■はなしをもとにもどしましょう。徹底的な省力化志向にそった全面的機械化ゆえの「無人化」。それは、AIをまたずとも、遠隔操作などをてはじめに、急速にすすんでいくはずです。20世紀以降の超合理化の本質は、複製技術によるコストカットと加速化による高密度化です。チャップリンが『モダンタイムズ』を制作した時代、すでに、「機械との競争」は充分自覚されていました。その時代には、「使う者は使われる」という逆説=皮肉としてだけ理解されていたかもしれませんが、驚異的な反復作業を難なくこなす機械に、ひとがかなうはずがないのでした。■したがって、オートメーションをサポートする人員はずっと確保されつづけるだろうけれども、それ自体が漸減ないし急減していくことは、自明の宿命だったとおもいます。
- 作者: エリクブリニョルフソン,アンドリューマカフィー
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2013/08/12
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
【つづく】