社会学A(中京大学2016年度)質問回答補遺11

◇「第15回プリントp.15「人口爆発は、早晩やみます」とあるが、本当に止まるのか? また、食料不足で世界中がパニックに陥る日は来てしまうのか?」:■人口爆発に対する不安はつたわってきますが、質問の趣旨は理解しかねます。人口爆発を世界の農業生産が吸収しきれないなら、食料不足は さけようがありません。人口爆発がやむのなら、世界の農業生産が衰微しないかぎり、食料不足はおきない計算になります。
■しかし、世界機関などが統計処理した推計は、世界全体が人口増加率を一貫してへらしていくだろうことをしめしています。21世紀後半でさえ年1%前後でふえていくので、21世紀後半には100億人こえてしまうだろうという推計ではあるのですが。■しかし、そういった推計自体、100億人以上の人口がどうにかたべていけるだけの農業・畜産・水産業が存続するだろうという楽観主義のうえになりたっているわけです。すくなくとも「食料不足で世界中がパニックに陥る日」が21世紀中にはこないだろうと期待されているわけです。
世界の人口増加率推移+推計.gif 直
世界人口推計.gif 直

■もちろん、世界の穀倉地帯が肥沃さをうしなっていっているとか、農業用水のくみあげすぎで地下水の水位が急激にさがっているなどの報告があり、懸念されています(仮想水問題)。■プリントでのべたように、「肉をたべたい層がふえるために、穀類がムダに消費されるとか、エネルギーのムダづかいが横行するといったことによる、地球環境全体への負荷がおおきくなること。なにより、人類にとっては、事実上無尽蔵ともいえる地下資源のうち、化石燃料(過去に地球がとりこんだ太陽エネルギーの蓄積物)を大量に消費することで、排出される熱を地球が放出できなくなるという根本的な問題がある」点こそ、人口問題+エネルギー問題があるわけです。■いいかえれば、人口爆発自体が問題ではなく、人口増と都市化による資源収奪/資源浪費が本質であり、それに付随して発生するだろう紛争が、より深刻になる可能性があります。「食料不足で世界中がパニックに陥る日」の到来を懸念するのではなく、食料生産に付随する資源問題、食料消費にともなう争奪戦や貧困・格差拡大、それら諸問題が誘発するだろう武力紛争や差別などこそ、今後の重要な課題となっていくでしょう。

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